血圧を下げるペプタイド

血圧を下げる食品由来のペプタイドが多数見つかっています。ペプタイドとはアミノ酸がいくつかつながったもののことです。

高血圧の治療

高血圧の治療には食事療法や運動療法が行われますが、これらだけでは充分に血圧が下がらない場合、薬が使われます。

そのとき、血圧を下げるペプタイドは、血圧を下げる薬よりも効果は緩やかですが、副作用の心配がない安全なものとして効果が期待されています。なお、これらのペプタイドは血圧が正常に機能している場合は働きません。

ゴマの効能 ~ゴマペプタイド~

血圧を下げるのがゴマの効能!?

ゴマそのものではありませんが、ゴマのタンパク質を分解して取り出したゴマペプタイドに血圧を下げる効果が認められています。

今のところ7種類のゴマペプタイドが血圧低下ペプタイドとして見つかっています。いずれもアミノ酸が3つ~5つくっついたペプタイドです。

Nakano D.et al.Biosci Biotechnol Biochem. 2006 May;70(5):1118-26.

血圧を下げる ~イワシペプタイド~

魚肉由来の血圧を下げるペプタイドとして、イワシ由来のイワシペプタイド、サケ由来のサーモンペプタイドなどが知られています。特に、イワシ由来のイワシペプタイドは、特定保健用食品では最も多く利用されているペプタイドです。

血圧調節の仕組み

血圧を調節するメカニズムは複雑ですが、主に血圧を上げる系と血圧を下げる系の2つによってバランスが保たれています。そのなかでも「レニン・アンジオテンシン系」という仕組みがもっとも食事と関係の深い血圧調節系であると考えられています。

そのメカニズムの中で血圧を上げないように穏やかに働いてくれるのが血圧降下ペプチドとよばれるものです。代表的なものにイワシペプタイド、ゴマペプタイドなどがあり、特定保健用食品にも指定されています。イワシとゴマのペプタイドは、血圧を調節する2つの仕組み両方に働いて血圧を上げるのを防いでくれます。

高血圧は危ない?

いろいろと話題となる高血圧。

高血圧は「サイレントキラー(静かな暗殺者)」といわれています。自覚症状も少なく、病気であるという意識が低い病態です。脳卒中や心筋梗塞など死亡率の高い病気のリスク・ファクターとなります。

血圧とは

血圧とは何でしょう。

私たちのからだには「血」が流れています。血は私たちが生きるために必要な酸素や栄養素、老廃物を毎日運んでくれています。栄養や酸素を運んでくれているのが動脈血、体中の細胞から集められた老廃物を運ぶ役割をしてくれているのが静脈血です。

血液は心臓がポンプの働きをして血を通す管(血管)を通して体中の臓器や細胞へと運ばれます。血圧とは、血液が全身に送り出されるときに血管にかかる圧力のことです。この圧力が基準値以上の状態が続く状態を高血圧といいます。

血圧の種類

血圧には最高血圧と最低血圧があります。

心臓が縮まって血液が押し出されたときの圧力を最高血圧(収縮期血圧)、心臓が大きく拡がって血液が戻ってきたときの血圧を最低血圧(拡張期血圧)といいます。

血圧の測定

自分の血圧を知るために、血圧を測定してみましょう。

心臓は1日10万回収縮します。つまり、血圧は1日10万回変動する可能性があるということです。

血圧はストレスや環境によって変わってしまうため、何回か測って自分の血圧が一日の中でどう変わるのか把握しておくことが大切です。
24時間測ることのできる血圧測定器も出ているようです。

血圧の正常値とは?

血圧の正常値とはどのくらいの値のことでしょう。

高血圧治療ガイドライン(2009)で定められている血圧目標値は以下の通りです。降圧目標は、年齢や合併症の有無により異なります。高血圧の方に限らず一般の方でも、病院や診療所で測ると家庭よりも高い数値が出ることが多いため、診察室血圧と家庭血圧の2種類に分けられています。

  診察室血圧 家庭血圧
若年者・中年者 130/85mmHg 未満 125/80mmHg 未満
高齢者 140/90mmHg 未満 135/85mmHg 未満
糖尿病患者
慢性腎臓病
心筋梗塞後患者
130/80mmHg 未満 130/85mmHg 未満
脳血管障害患者 140/90mmHg 未満 135/85mmHg 未満

降圧目標(mmHg):日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」より

高血圧の種類 ~本態性高血圧~

高血圧には2種類あります。

日本人の90%以上が入るのが本態性高血圧(一次性高血圧)と呼ばれるもので、原因がはっきりしていない高血圧のことです。食習慣、運動不足、肥満、喫煙、飲酒、ストレスなどが関係するといわれています。

もうひとつは「二次性高血圧」と呼ばれ、腎臓病やホルモン異常など、原因となる病気があるものをいいます。こちらは、原因となる病気が治ると、高血圧も改善します。

遺伝と高血圧

本態性高血圧は遺伝的な要素が強く、両親ともに高血圧の場合、子どもが高血圧になる確率は50%といわれています。

グルタチオンは肝臓やほかの細胞でつくられるトリペプタイドです。

グルタチオンはからだのサビ取り(抗酸化)に働くため、アンチエイジング(老化防止)効果や放射線障害予防効果などで注目されています。

※トリペプタイドとはアミノ酸が3つつながっているもののことです。

グルタチオンの材料

グルタチオンはグルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸からできています。

グルタチオンの分布

グルタチオンはからだの中のほとんどの細胞に存在しています。

※細胞とは、生き物のからだをつくっている一番小さい単位のことです。

グルタチオンの吸収

アミノ酸がつながってできたグルタチオン。

グルタチオンは全部ではありませんが、グルタチオンのまま吸収されてその効果を発揮することがわかってきています。昔はグルタチオンを口から摂っても、いちばん小さなアミノ酸に分解されてから吸収されると考えられていました。

グルタチオンの働き

グルタチオンの働きはたくさんありますが、抗酸化に大きな役割を果たしています。グルタチオンの主な働きは以下の通りです。

  • 生体恒常性の維持
  • 細胞内還元剤
  • 過酸化水素の還元(無毒化)
  • 酸化型アスコルビン酸の還元
  • 薬物・異物の解毒作用
  • 酵素の補酵素

グルタチオンの効果

グルタチオンには以下のような効果が期待されています。

  • 老化防止
  • アルコール性脂肪肝予防
  • 肝機能障害予防
  • 放射線障害予防
  • 白内障進行防止 など

グルタチオンとビタミンC

グルタチオンはサビ取りをして疲れたビタミンC(酸化型ビタミンC)をもとの元気なかたち(還元型ビタミンC)に戻してくれます。

美白とグルタチオン

ブームとなった白い肌。グルタチオンは美白と関係しているともいわれます。グルタチオンは日焼けでできる黒色色素メラニンを抑える働きがあるといわれています。

二日酔いとグルタチオン

飲みすぎの後に起こる二日酔い。グルタチオンはお酒を飲んだ後にできる二日酔いの原因、毒(アセトアルデヒド)を無毒化してくれます。

老化防止とグルタチオン

老化のメカニズムはまだ不明ですが、老化防止(アンチエイジング)はいかにからだのサビ(体内の酸化)を防ぐかがカギであるというのが有力な説です。

この老化防止、からだのサビ取りにグルタチオンが有効であるということがいわれています。グルタチオンは体内でつくられますが、加齢とともに少なくなることが知られています。そしてこれが老化につながるのでは、という意見があります。

グルタチオンを多く含む食品

グルタチオンは肉類や酵母など多くの食品に含まれます。グルタチオンを多く含む食品は以下の通りです。グルタチオンの量は食品の鮮度や加熱調理などによっても変化します。

  • レバー
  • 肉類
  • 小麦胚芽
  • パン酵母
  • キウイフルーツ
  • アボカド など

私たちのからだは何種類のアミノ酸でできているでしょう?
驚いたことに、私たちのからだは主にたった20種類のアミノ酸からできています。

この20種類のアミノ酸は、からだの中でつくることのできない必須アミノ酸と、からだの中でつくられる非必須アミノ酸とに大きく分けることができます。必須アミノ酸は、毎日の食事から必ず摂ることが必要とされるアミノ酸です。

タンパク質を構成する20種類のアミノ酸

非必須アミノ酸

体内で合成できるが、様々な働きがあるため、摂取したいアミノ酸

※アルギニンは小児では必須アミノ酸に含まれる

必須アミノ酸

体内では合成されず、必ず食物から補給しなければならないアミノ酸。

バリン【Val】必須アミノ酸

バリンは特に筋肉をつくるのに大切な必須アミノ酸です。イソロイシン、ロイシンとともにBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれます。不足すると食欲を低下させ、栄養不良の悪循環を引き起こすと考えられています。

【働き】
  • 成長に関与
  • 血液中の窒素バランスの調整
  • 肝機能向上

バリンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 クロマグロ 牛・豚レバー プロセスチーズ 豆腐
1食当たり
使用量
刺身7切れ
(赤身、100g)
生、100g 1切れ
(20g)
1/3丁
(木綿、100g)
含有量 1300mg 1100mg 320mg 330mg

イソロイシン【Ile】必須アミノ酸

イソロイシンはタンパク質、特に筋肉をつくるのに大切な必須アミノ酸です。バリン、ロイシンと ともにBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれます。ヘモグロビンを形成するのに必要なアミノ酸です。

【働き】
  • 成長促進
  • 神経機能補助
  • 血管拡張
  • 肝機能向上

イソロイシンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 クロマグロ 豚ロース赤身 鶏卵
1食当たり
使用量
刺身7切れ
(赤身、100g)
生、100g 1個
(生、55g)
含有量 1200mg 1000mg 336mg

ロイシン【Leu】必須アミノ酸

ロイシンは子どもの成長や大人の筋肉維持に必要な必須アミノ酸です。バリン、イソロイシンとともにBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれます。ロイシンはタンパク質の生成・分解を調整することによって、筋肉の維持に働きます。

【働き】
  • 肝機能向上
  • 肝細胞の増殖・分化の正常化
  • 血糖コントロール
  • タンパク質生合成の促進
  • 筋タンパク質の維持
  • 筋肉グリコーゲン合成・酵素活性の促進

ロイシンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 カツオ 鶏むね肉 鶏卵
1食当たり
使用量
刺身7切れ
(100g)
(生、皮なし、
100g)
1個
(生、55g)
含有量 1800mg 1900mg 550mg

メチオニン【Met】必須アミノ酸

メチオニンは、からだの中でタンパク質をつくるとき必ずいちばんはじめに必要な必須アミノ酸です。これが不足すると、すべてのタンパク質合成に支障が出てしまうおそれが出ます。メチオニンはまた、脂肪をエネルギーに変えるときに必要なカルニチンという物質の生合成にもかかわります。

【働き】
  • 開始アミノ酸としての役割
  • 薬物中毒の解毒
  • 肝機能の改善

メチオニンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 クロマグロ 鶏むね肉 豚ロース赤身 無調整豆乳
1食当たり
使用量
刺身7切れ
(赤身、100g)
(生、皮なし、
100g)
生、100g 小1パック
(200g)
含有量 760mg 640mg 620mg 104mg

リジン(リシン)【Lys】必須アミノ酸

リジンは小麦や米など穀類に少ない必須アミノ酸です。リジンはまた、脂肪をエネルギーに変えるのに必要なカルニチンという物質の材料になります。

【働き】
  • 身体組織修復
  • 成長に関与
  • 肝機能の向上

リジンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 カツオ マアジ 凍り豆腐
1食当たり
使用量
刺身7切れ
(100g)
刺身
(100g)
1枚
(乾、15g)
含有量 2100mg 1900mg 510mg

フェニルアラニン【Phe】必須アミノ酸

フェニルアラニンは、チロシンを経て脳内神経伝達物質ドーパミンやノルアドレナリン、黒色色素メラニンの材料になる必須アミノ酸です。合成甘味料アスパルテームの原料ともなるアミノ酸です。

【働き】
  • 血圧の上昇
  • 鎮痛作用
  • ドーパミン・ノルアドレナリンの材料

フェニルアラニンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 牛レバー クロマグロ 鶏むね肉
1食当たり
使用量
生、100g 刺身7切れ
(赤身、100g)
(生、皮なし、
100g)
含有量 1100mg 970mg 930mg

トリプトファン【Trp】必須アミノ酸

トリプトファンは、体内でナイアシンになったり、脳内神経伝達物質セロトニンの材料となる必須アミノ酸です。トリプトファンはトウモロコシに少ないため、昔トウモロコシを主食としていた地域でナイアシン欠乏症(ペラグラ)が発生しました。

【働き】
  • セロトニンやメラトニンの材料
  • コレステロール、血圧のコントロール

トリプトファンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 カツオ 牛・豚レバー 鶏卵 プロセスチーズ
1食当たり
使用量
刺身7切れ
(100g)
生、100g 1個
(生、55g)
1切れ
(20g)
含有量 310mg 290mg 99mg 58mg

スレオニン【Thr】必須アミノ酸

スレオニンは、人が体内で全く合成できない必須アミノ酸です。魚や鶏肉、肉などに多く含まれています。

【働き】
  • 成長促進
  • 脂肪肝の抑制

スレオニンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 クロマグロ
ロース赤身
鶏むね肉 凍り豆腐 プロセス
チーズ
1食当たり
使用量
刺身7切れ
(赤身、100g)
生、100g (生,皮なし,
100g)
1枚
(乾、15g)
1切れ
(20g)
含有量 1100mg 1100mg 1100mg 315mg 166mg

ヒスチジン【His】必須アミノ酸

ヒスチジンは、人の体内での合成が比較的遅いアミノ酸で、幼児が不足すると湿疹ができてしまうおそれがある必須アミノ酸です。ヘモグロビンに多く含まれているので、不足すると貧血になるおそれが出ます。

【働き】
  • 成長に関与
  • ヘモグロビン、白血球の産生に関与

ヒスチジンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 カツオ クロマグロ まいわし
1食当たり
使用量
刺身7切れ
(100g)
刺身7切れ
(赤身、100g)
刺身
(100g)
含有量 2500mg 2400mg 1000mg

アルギニン【Arg】必須アミノ酸※小児で必須アミノ酸

アルギニンは、成長期にその合成能力が足りないため小児で必須アミノ酸となっています。アルギニンは、成長ホルモン、インスリンやグルカゴンの分泌促進に関わります。

【働き】
  • 一酸化窒素の前駆体
  • 成長ホルモン、インスリン、グルカゴンの分泌に関与

アルギニンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 イセエビ 豚ロース赤身 鶏むね肉 無調整豆乳
1食当たり
使用量
生、100g 生、100g (生、皮なし、
100g)
1パック
(200g)
含有量 2100mg 1500mg 1500mg 600mg

準必須アミノ酸

グルタミン【Gln】非必須アミノ酸

グルタミンはグルタミン酸とアンモニアからつくられる非必須アミノ酸です。しかしストレスなどで足りなくなる場合もあり、準必須アミノ酸といわれます。血漿中にもっとも多いアミノ酸です。

【働き】
  • 小腸のエネルギー源
  • 免疫細胞のエネルギー源
  • 消化管粘膜の保護 など

非必須アミノ酸

体内で合成できるが、様々な働きがあるため、摂取したいアミノ酸。

グリシン【Gly】非必須アミノ酸

グリシンはコラーゲンの33%を占める非必須アミノ酸です。甘味のあるアミノ酸で、体内ではセリンやスレオニンからつくられます。睡眠の質をよくするともいわれています。

【働き】
  • クレアチンリン酸の材料
  • コラーゲンの材料
  • 神経伝達物質
  • 胆汁酸抱合体の材料
  • 赤血球の材料 など

グリシンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 車エビ 豚ひき肉 うに
1食当たり
使用量
4尾分
(生、身の部分
100g)
生、100g 刺身1人分
(30g)
含有量 2600mg 1500mg 600mg

アラニン【Ala】非必須アミノ酸

アラニンはほとんどすべてのタンパク質に広く存在している非必須アミノ酸です。グルタミン酸とピルビン酸からつくられます。アミノ酸の中でいちばんグルコースにかわりやすいといわれています。

【働き】
  • エネルギー源 など

セリン【Ser】非必須アミノ酸

セリンは体内でグリシンやグルタミンなどからつくられる非必須アミノ酸です。タンパク質分解酵素(キモトリプシンやトリプシン)など多くの酵素の重要な部分(活性中心)に存在します。

【働き】
  • さまざまな酵素の部分を構成
  • 情報伝達を担う(リン酸化をうける)
  • 中枢神経の栄養因子など

チロシン【Tyr】非必須アミノ酸

チロシンはフェニルアラニンからつくられる非必須アミノ酸です。ドーパミン、ノルアドレナリン、甲状腺ホルモンなどの原料になります。非必須アミノ酸ですが、チロシンを直接摂ることは必須アミノ酸であるフェニルアラニンの節約になります。

【働き】
  • アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの材料
  • 甲状腺ホルモンの材料
  • 黒色色素メラニンの材料 など

チロシンを多く含む食べ物(1食当たり使用量と含有量)1)

食品 クロマグロ 豚ロース赤身 凍り豆腐
1食当たり
使用量
刺身7切れ
(赤身、100g)
生、100g 1枚
(乾、15g)
含有量 860mg 810mg 330mg

システイン【Cys】非必須アミノ酸

システインは硫黄を含んだ非必須アミノ酸です。からだの中のタンパク質は立体の形をしていることが重要な意味を持ちますが、その立体構造を保つのに大切な役割をしているのがシステインです。タウリンや、エネルギーをつくるのに大切な補酵素CoAの成分にもなります。

【働き】
  • タンパク質の立体構造に関与
  • タウリンの成分
  • 補酵素CoAの成分など

アスパラギン【Asn】非必須アミノ酸

アスパラギンは世界で最初に発見された非必須アミノ酸です。アスパラギンの一部は水と仲のいい部分を持っていて(極性がある)、タンパク質の表面にあって水や他の極性のあるアミノ酸とくっつく性質があります。

【働き】
  • 水素結合
  • 糖鎖の結合
  • オキサロ酢酸の材料 など

プロリン【Pro】非必須アミノ酸

プロリンは本来イミノ酸ですが、アミノ酸の名前で呼ばれている非必須アミノ酸です。体内ではグルタミン酸などからつくられます。プロリンはコラーゲンの材料となり、強いコラーゲン合成に役立っています。

【働き】
  • コラーゲンの材料
  • 角質層保湿作用
  • コラーゲン修復作用 など

アスパラギン酸【Asp】非必須アミノ酸

アスパラギン酸は、からだの中に存在する割合としては少ないですが、タンパク質の親水性のかたまり部分などで重要な役割を担っている非必須アミノ酸です。人口甘味料アスパルテームの原料でもあります。

【働き】
  • アラニンの原料
  • 神経伝達物質 など

グルタミン酸【Glu】非必須アミノ酸

グルタミン酸は、小麦グルテンから発見されたアミノ酸です。タンパク質をつくるアミノ酸として広く存在します。アスパラギン酸とともにタンパク質の親水性のかたまりの部分で重要な役割を果たしています。

【働き】
  • 興奮性神経伝達物質
  • アンモニアのコントロール
  • アンモニア解毒の基質(脳)
  • GABAの材料
  • グルタチオンの材料

【参考・引用文献】
1)日本食品成分表準拠アミノ酸成分表2010(文部科学省)

人をつくるアミノ酸

人間の身体は頭の先からつま先まで、全てタンパク質でできています。髪の毛も爪も筋肉もタンパク質です。

生命をつくる最も大切な栄養素、それがタンパク質です。

そしてタンパク質はアミノ酸によってつくられています。アミノ酸のおかげで私たちは成り立っているのです。

アミノ酸の消化・吸収

食べたタンパク質は、まず歯で噛み砕かれ、胃酸で消化されやすく加工されます。その後、胃や十二指腸で分解されて、小腸で小さなペプチドやアミノ酸のかたちになって吸収されます。

吸収されたアミノ酸は、いったん肝臓に集められ、そこから全身に運ばれます。そして遺伝子の情報に基づいて筋肉や心の素(神経伝達物質)、ホルモンなどにつくり変えられ、私たちの生活を支えてくれています。

必須アミノ酸

私たちのからだは何種類のアミノ酸でできているでしょう?
驚いたことに、私たちのからだは主にたった20種類のアミノ酸からできています。

この20種類のアミノ酸は、からだの中でつくることのできない必須アミノ酸と、からだの中でつくられる非必須アミノ酸とに大きく分けることができます。必須アミノ酸は、毎日の食事から必ず摂ることが必要とされるアミノ酸です。

必須アミノ酸

体内では合成されず、必ず食物から補給しなければならない

  • バリン
  • イソロイシン
  • ロイシン
  • メチオニン
  • リジン(リシン)
  • フェニルアラニン
  • トリプトファン
  • スレオニン(トレオニン)
  • ヒスチジン

非必須アミノ酸

体内で合成できるが、様々な働きがあるため、摂取したいアミノ酸

  • アルギニン
  • グリシン
  • アラニン
  • セリン
  • チロシン
  • システイン
  • アスパラギン
  • グルタミン
  • プロリン
  • アスパラギン酸
  • グルタミン酸

※アルギニンは小児では必須アミノ酸に含まれる

毎日入れ替わるアミノ酸

私たちのからだは脂肪は貯えることができますが、アミノ酸は貯金することができません。

アミノ酸がつながってできるタンパク質は新しいアミノ酸と毎日毎日入れ替わってからだを維持しています。したがって、毎日質のいいアミノ酸(タンパク質)を摂ることが毎日の健康の秘訣になってきます。

タンパク質の「質」を決定するアミノ酸の桶

9種類の必須アミノ酸のバランスのことをアミノ酸スコアといいます。それぞれのアミノ酸が全て必要量を満たしていれば、アミノ酸スコア100となります。
しかし、一つでも必要量を満たしていなければアミノ酸スコアも減少します。

例)必須アミノ酸の1種類だけが必要量の60%しか満たしていない場合、アミノ酸スコアは60となります。

アミノ酸スコアとプロテインスコア 〜タンパク質の評価方法〜

食品 アミノ酸
スコア
プロテイン
スコア
鶏卵 100 100
牛肉 100 80
大豆 100 56
牛乳 100 74
アジ 100 89

アミノ酸スコアの方が新しい指標ですが、それよりも前に出たプロテインスコアの方が評価が厳しく実用的という意見もあります。数字が高いほうがタンパク質として質がいい印です。

からだが喜ぶアミノ酸の食べ方

アミノ酸を摂るときに、からだが喜んでくれるように効率よく食べる方法があります。それは、先ほど「アミノ酸の桶」で見た、欠けているアミノ酸を多く持っているほかの食べ物を一緒に食べるということです。

例えば、納豆を食べるときは、ツナやかつお節をまぜて一緒に食べる。玄米ごはんを食べるときは納豆やアジを一緒に食べるとよいでしょう。

アミノ酸の必要量

私たちは、どのくらいのタンパク質やアミノ酸が必要なのでしょうか?

驚いたことに、こんなに大切なタンパク質やその構成成分であるアミノ酸ですが、人のからだにとってどのくらい必要なのかは、未だ明らかになっていないのが現状です。

アミノ酸の必要量

からだが要求するアミノ酸の必要量とそのアミノ酸パターンは、一人ひとりの代謝能力、年齢、性別、食事、ストレス、ライフスイタイル、身体活動などによって変わります。同一人物でも1日の時間帯や人生の段階によって変わってしまい、本当にからだが必要とする量を確実に計算することはできないようです。

しかし、ストレス時、スポーツ選手、妊婦さん、成長期の子ども、病気からの回復時、飲酒・喫煙時などは普段の状態よりも必要量が増えることがわかっています。

大人の必須アミノ酸必要量

2007年に、WHO/FAO/UNUより22年ぶりにタンパク質・アミノ酸についての報告が改定されています。主な改善点としては、成人の必須アミノ酸必要量の数値が1985年の2~3倍となったことが挙げられます。

成人の必須アミノ酸必要量(単位:mg/kg/日)1)
  1985年
FAO/WHO/UNU
2007年
FAO/WHO/UNU
ヒスチジン 8-12 10
イソロイシン 10 20
ロイシン 14 39
リジン 12 30
メチオニン + システイン 13 15
フェニルアラニン + チロシン 14 25
スレオニン 7 15
トリプトファン 3.5 4
バリン 10 26

アミノ酸の生理作用

アミノ酸の生理作用を機能別にまとめると以下のようになります。

機能 関係するアミノ酸
材料、調節 タンパク質合成 ロイシン(すべてのアミノ酸)
エネルギー源 クレアチン合成、ATP産生 グリシン、アルギニン、メチオニン
細胞増殖 プリン、ピリミジン合成 グルタミン、グリシン、アスパラギン酸
神経伝達 セロトニン、カテコールアミン トリプトファン、チロシン、グルタミン酸
循環の調節 一酸化窒素 アルギニン
免疫能増強 リンパ球増殖 グルタミン、アルギニン
抗酸化作用 グルタチオン、タウリン システイン、グルタミン酸、グリシン
転写調節 RNA生合成 ロイシン
窒素輸送 アンモニア輸送 グルタミン、アラニン
ホルモン分泌 成長ホルモン、インスリン アルギニン、ロイシン
生理活性物質 ヒスタミン、カルニチン ヒスチジン、リジン

必須アミノ酸の覚え方

必須アミノ酸を覚えるのは大変ですね。でもいろんな語呂で合わせると必須アミノ酸も覚えやすくなります。ご自分でいろんな言葉で作ってみると面白いかもしれません。

雨拾い振り飛ばす あ!太り目広いバス

:アルギニン
:メチオニン
:ヒスチジン
:ロイシン
:イソロイシン
:フェニルアラニン
:リシン(リジン)
:トリプトファン
:バリン
:スレオニン

:アルギニン
:フェニルアラニン
:トリプトファン
:リシン(リジン)
:メチオニン
:ヒスチジン
:ロイシン
:イソロイシン
:バリン
:スレオニン

鎌状赤血球 1つアミノ酸が変わるだけでこんな病気になってしまう

タンパク質のかたちや働きはアミノ酸の並び方で決まります。アミノ酸の並び方がタンパク質の性質を決めるのです。

遺伝子(DNA)の突然変異によって、グルタミン酸がバリンに変わってしまうだけで、円盤のかたちをした赤血球が鎌型になってしまう病気があります。「鎌状赤血球貧血症」という病気です。

鎌状赤血球貧血症は、酸素が少なくなると、赤血球の形が鎌状になり、血流が悪くなってしまいます。両親がこの病気の場合、子供は生まれる前に死亡してしまうそうです。

さまざまなアミノ酸の効果

生活習慣病とアミノ酸

人類はもともと肉食動物に位置付けられています。

1万年前に農耕が始まる前の食事は、必須アミノ酸を摂りやすい動物の肉や木の実、魚や貝類でした。

しかし現代はどうでしょう。必須アミノ酸・リジンやメチオニンが少ない穀類を主食とする生活に変わってきています。

穀類の足りないアミノ酸を補うことのできる卵や肉が高価だった時代は、それを大量の穀類で補う必要がありました。しかしそれではエネルギーが多くなりすぎるという問題点がありましたが、機械のなかった100年前までは労働がハードでしたので、その分を労働で使い切ることができていました。

機械化の進んだ現代はその余剰分を使い切ることができず、そのバランスの乱れが生活習慣病に大きく関係しているといわれています。

持久力アップとアミノ酸 ~BCAA(バリン、イソロイシン、ロイシン)~

アミノ酸BCAAが持久力アップの方法につながるといわれています。

筋肉の主成分はBCAAです。筋肉の40%をBCAAが占めています。BCAAは筋肉の材料でもありますが、筋肉のエネルギー源ともなります。

運動前にBCAAを摂っておくことは長時間運動の持久率アップにつながるといわれています。

筋肉痛解消とアミノ酸 ~BCAAとアルギニン~

筋肉痛解消にアミノ酸。

運動の20~30分前にBCAAを摂っておくと、筋肉痛が軽く済むことが期待されています。

またこのとき、アルギニンも一緒に摂るとよいでしょう。アルギニンは筋肉の修復をしてくれる成長ホルモンの分泌を促してくれます。

脳の感じる疲労とBCAA

運動中、私たちの「脳」が「疲れた」と感じるのを予防するのに、BCAAが役立つと考えられています。

人は激しい運動をしたときなど、ときによって脳が「疲れ」を感じます。そのメカニズムとして、脳内でのセロトニン合成が進んでいることが考えられています。

セロトニンの材料はトリプトファンですが、このトリプトファンとBCAAの脳への入り口が同じです。そして脳に入っていく量は血中にあるそれぞれの量に比例します。

ですので、運動するときにBCAAを摂っておくと、量の多いBCAAの方が優先的に脳の中に入っていって、トリプトファンが脳の中に入れません。その結果、セロトニンの合成が阻害されて、この「脳の感じる疲労(中枢性疲労)」を軽くしてくれるかもしれないのです。

ストレス対策栄養素 ~グルタミン~

ストレスの多い現代社会。ストレス対策に関係する栄養素としてグルタミンがあります。

グルタミンは、筋肉に貯金されているアミノ酸の40%を占めています。そして精神的あるいは運動等によるストレスによって筋肉から取り出され、使われます。グルタミンは体内でつくられますが、ストレス時は体内での生合成だけでは足りなくなるおそれが出ます。

傷が治るのを早めたり、小腸や免疫細胞のエネルギーになるグルタミン。ストレス時にはグルタミンをしっかり摂りましょう。

アスリートとグルタミン

グルタミンは免疫細胞の活性化に深く関与しています。

アスリートが行うような過剰な運動(ストレス負荷)時には筋肉は充分なグルタミン供給ができずに血中のグルタミンが少なくなり、それが免疫の低下につながるおそれが出ます。

その結果、上気道炎、損傷治癒遅延、疲労感、怪我による感染症などへのリスクが高まるおそれが出てしまいます。

運動後のグルタミン摂取は、グリコーゲン回復を早め、スタミナ回復に有益です。

ダイエット効果 ~脂肪を燃やすカルニチン~

カルニチンは脂肪を燃やすときに必須のアミノ酸の仲間です。

カルニチンは脂肪酸をエネルギー工場(ミトコンドリア)に運び入れてくれています。正しいダイエットでは、筋肉量を保ちながら余分な体脂肪を燃やすことが優先されます。そのとき、カルニチンが活躍してくれます。カルニチンがないと運動をどんなにがんばってしても脂肪が落ちにくくなってしまいます。

体脂肪を燃やすことで有名なカルニチンですが、現在、さまざまな研究によって疲労回復や運動分野における効果なども期待されているところです。

カルニチンの材料は?

カルニチンをつくるには、アミノ酸(リジンとメチオニン)、ビタミンC、鉄、ビタミンB6、ナイアシンが必要です。カルニチンは体内でつくられますが、加齢によりその合成量が少なくなります。

脂肪肝とアミノ酸 ~アミノ酸の仲間・ベタイン~

ベタインは、ビート(砂糖大根)から分離されるアミノ酸の仲間(誘導体)で、グリシンと似た構造を持ちます。

ベタインを口から摂ることで、動脈硬化の原因といわれている「ホモシステイン」の濃度を下げることがいわれています。また、ベタインを摂ることによって、お酒の飲みすぎでなってしまった脂肪肝の改善や、循環器・認知障害が改善されたという報告もあります。

ダイエットとアミノ酸 ~分子栄養学的アプローチ~

正しいダイエットでは、筋肉量を保ち、余分な体脂肪を減らすことが有効です。そのためには、適度な運動や生活習慣をまずなおして、タンパク質や微量栄養素をしっかり摂ることが挙げられますが、減量を補助する栄養素としては以下のようなものが考えられます。

イノシトール(VB群)
ベタイン(アミノ酸)
グリシン(アミノ酸)
  • 抗脂肪肝因子
  • 肝臓へ蓄積する脂肪を効率的にリン脂質へ代謝する
  • グリシンは抑制系の神経伝達物質(睡眠の質の改善・疲労回復作用)
カルニチン(アミノ酸)
  • 脂肪酸がミトコンドリア内膜を通過する際に必要なアミノ酸
  • 脂肪酸代謝を効率化する
アルギニン(アミノ酸)
オルニチン(アミノ酸)
リジン(アミノ酸)
  • 成長ホルモンの分泌を促す
  • 基礎代謝の向上に関与する

アンチエイジング ~成長ホルモンとアミノ酸~

アンチエイジングが注目されています。内側から若返るために、若返りのもと「成長ホルモン」を確保するには何が要るでしょう?

このとき活躍するのがアルギニン、オルニチン、リジンです。これらのアミノ酸は筋肉組織をつくったり、成長ホルモンの合成や分泌を促す働きがあります。

若々しさを保つために、しっかり夜間に睡眠をとり、アミノ酸も補給して成長ホルモンを確保しましょう。

成長ホルモン

子どもの成長にかかわったり、私たちが寝ている間に疲れたからだを元に戻してくれる成長ホルモン。しかし、成長ホルモンは20代を境に急激に体内合成が低下します。

成長ホルモンの働き
  • 筋肉量の増加
  • 体脂肪の減少
  • 骨を丈夫にする
  • 血圧、コレステロール値の改善
  • 皮ふのハリ、弾力性の改善
  • 心機能の改善 免疫機能の改善
  • 傷の治りを早める

質のいい睡眠とアミノ酸 ~トリプトファン・グリシン・グルタミン~

毎日を快適に過ごす秘訣、よい睡眠。質のいい睡眠にもアミノ酸が活躍しています。

睡眠のリズムをつくっているのはメラトニンです。メラトニンはトリプトファンを原料として脳の中でつくられます。そして睡眠のリズムにはメラトニンのほかにGABAやグリシンもかかわっており、GABAは脳内でグルタミンからつくられます。また、グリシンは神経伝達物質としての働きがあり、「睡眠の質」を向上するアミノ酸として注目されています。

アミノ酸をしっかり補給し、質のいい睡眠をとりましょう。

このような症状で悩んでいたら…

  • 目覚めが悪い
  • 日中眠くなる
  • 寝ても疲れが取れない
  • 日中の作業がはかどらない
  • なんとなく気分が優れない

・グリシン摂取による効果

  • 睡眠の質の改善
  • 日中の作業効率の改善
  • 夜間頻尿の改善
  • 気分がすっきりする

皮ふとアミノ酸

人のからだは大部分が水でできています。その水の蒸発を防いでくれているのが皮ふです。そして細菌やウイルス、汚れからからだを守ってくれているバリアが皮ふのいちばん外側、角質層といいます。

みずみずしい肌は憧れですが、その皮ふの潤いをつくりだしてくれているのが角質層の細胞に含まれる天然保湿成分(NMF)です。このNMFの約半分がアミノ酸でできています。

いいアミノ酸を十分補うこと。これが潤いのあるきれいな肌を保つ第一歩につながります。

旨味とアミノ酸 ~日本人が発見!グルタミン酸~

アミノ酸は「おいしい!」と感じるもとにもなります。

グルタミン酸は、明治41年(1908)池田さんという人が、昆布の出汁から抽出、「うまみ」と名付けました。そして今では世界中で甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ5つ目の味覚とされるようになりました。

「おいしさ」とアミノ酸

グルタミン酸のほかにも、いろんなアミノ酸が「おいしさ」に関係しています。

  • テアニン:玉露の旨味
  • グリシン:甘味や総合的なおいしさに関係
  • アルギニン:味の持続性、複雑さ、コク、風味に貢献

アミノ酸チェック

ご自身のアミノ酸摂取量は足りているでしょうか?
該当する項目が多い方は、カルニチン、アルギニン、オルニチン、リジン等を摂ることによって、症状の改善や目標の達成に役立てることが期待できます。

若い頃気にならなかったところに
脂肪がつくようになった
運動後の筋肉痛や疲労の回復が
遅い気がする
  検診で「肥満」といわれた   減量しても体重が元に戻りやすい
  筋肉が落ちた気がする   生活習慣病が気になる
  ダイエット中である   疲れがなかなかとれない
  運動のパフォーマンスを上げたい   何となく老けた気がする
  運動中のスタミナが続かない   肌のハリがなくなった気がする

【参考・引用文献】
1)タンパク質・アミノ酸の必要量~WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告(医歯薬出版株式会社)

生命の基本 タンパク質

タンパク質とは何でしょう?

生命の根底をつくる最も大切な栄養素、それがタンパク質です。

人間の身体は、頭の先からつま先まで全てタンパク質でできています。私たちが食べたり、ものを見たり、歩いたり、考えたりできるのも、そして病気になったりするのも、すべてタンパク質がかかわっています。

からだは日々新しくなる

わたしたちの身体は日々分解され(異化)、新しくつくられて(同化)います。

この異化と同化が同じレベルで保たれるとき、私たちは健康でいられます。このときいちばん重要な栄養素がタンパク質です。

異化と同化

  • 異化=同化:健康の維持
  • 異化>同化:病気の発症、老化現象

異化=同化であるためには、材料(栄養素)が必要です。

タンパク質の消化と吸収

食べたタンパク質はどのようにして消化され、吸収されるのでしょう?

食べたタンパク質は、ハサミ(消化酵素)で切られて小さなペプタイドやアミノ酸に分解され、吸収されます。

タンパク質を細かく消化してくれるハサミ(消化酵素、ペプシンやトリプシンなど)もアミノ酸からつくられます。そのため、タンパク質が足りない人ほど消化酵素も足りなくなり、タンパク質を消化しにくくなる悪循環に陥ったりします。

タンパク質は、消化酵素によってペプタイドやアミノ酸に分解される。

タンパク質の分類

タンパク質を分類するとき、その働きから構造タンパク質 と機能タンパク質に大きく分けられます。からだを構成しているのが構造タンパク質、消化したり物を運んだり、化学反応に関わるタンパク質が機能タンパク質です。これらのタンパク質が毎日せっせと私たちの身体の中で働いてくれています。

構造タンパク質

身体の
構成成分
  • コラーゲン(骨、皮膚、歯、爪、毛髪等)
  • 細胞構成タンパク質(筋肉、皮膚、内蔵等)
  • 核タンパク質(DNA、RNAの材料)

機能タンパク質

酵素として
代謝に関与
  • 消化酵素(アミラーゼ、ペプシン、トリプシン等)
  • 種々の代謝を行う酵素類
収縮性タンパク質
  • アクチン、ミオシン(筋肉)
  • 細胞骨格等
生体の防衛に関与
  • 抗体
  • 補体
  • フィブリノーゲン(血液凝固)等
ホルモンとして
代謝を調節
  • インスリン、グルカゴン
  • 成長ホルモン等
アミノ酸の貯蔵
  • アルブミン等
栄養素や酸素の運搬
  • アルブミン
  • ヘモグロビン
  • リポタンパク等
エネルギー源
としても働く
  • タンパク質1gあたり4kcalのエネルギー
レセプターの構成成分
(情報伝達)
  • LDLレセプター
  • インスリンレセプター等

タンパク質の主な働き

タンパク質には実に多くの働きがあり、不足すると様々な症状が引き起こります。

働き 不足するとおきやすい症状
  • 皮膚・毛髪・爪をつくる
  • 骨・歯・筋肉をつくる
  • 内臓(肝臓・胃腸など)をつくる
  • 血管をつくる
  • 血液をつくる
  • 酵素をつくる
  • ホルモンをつくる
  • 抗体・インターフェロンをつくる
  • 皮膚の美しさ、髪のしなやかさがなくなる
  • 骨、歯、筋肉が弱く、もろくなる
  • 内臓が衰え、弱くなる
  • 血管がもろくなる
    (高血圧、脳卒中につながるおそれ)
  • 貧血になる
  • 代謝が悪くなる
  • 身体の調節がきかなくなる
  • 細菌・ウイルスに感染しやすくなる

タンパク質はエネルギー源?

タンパク質は1g当たり4kcalというエネルギーをつくり出したりもします。

私たちが食べ物を食べるいちばん大きな意味は「エネルギーをつくること」です。食べたタンパク質にそれぞれの役割でうまく働いてもらうには、からだが必要とするエネルギーを他で十分に摂ることが大切です。

タンパク質の必要量 〜新しいものと古いものは入れ替わる〜

タンパク質の必要量はどのくらいでしょうか。

大人のからだを健康に保つには、1日当たり体重1kgにつき1~1.5g程度のタンパク質が必要といわれます。例えば、体重60kgの人は1日約60~90gのタンパク質が毎日必要になります。

からだが必要とするタンパク質の量は、年齢やストレス(精神的なもの、寒さや暑さ、筋肉トレーニングなど)などによって増えます。

【タンパク質の必要量が増える方の例】
がん患者さん、甲状腺機能亢進症、ストレス亢進時、
成長期のお子さん、妊娠期・授乳期の女性、アスリートなど

タンパク質の動的平衡

20世紀の初めまで、からだをつくるタンパク質は、食事で食べるタンパク質とは関係のない、別のものであると考えられていました。しかし、1930年代にドイツ人のシェーンハイマーらの実験によって、からだをつくるアミノ酸が絶えず入れ替わっていることが明らかとなりました。この現象をタンパク質の代謝回転といいます。

そしてタンパク質が代謝回転するたびに、食べたタンパク質のアミノ酸が、からだの中にあるタンパク質を構成していたアミノ酸と少しずつ交代して入れ替わっていきます。見た目は変わらずとも中身が変わっていくこの状態を「動的平衡」と呼びます。

この動的平衡は細胞によって期間が違うものの、速いものでは0.7日というものすごい速さで変わっていきます。これが毎日十分な量のタンパク質を食べなければならない理由です。そして、その必要量は、個人やその人の置かれている状況によってそれぞれ異なってきます。

しかしこのことはまた、日々いいタンパク質を充分量食べることで、新しい自分に生まれ変わることができるという人体の素晴らしい可能性を示しています。

タンパク質とアミノ酸

アミノ酸は生命維持に不可欠です。
そのアミノ酸によってタンパク質は構成されています。

タンパク質:アミノ酸の鎖が長い。ペプタイド:アミノ酸の鎖が短い。

必須アミノ酸

必須アミノ酸とは何でしょう?

人間の身体を構成するアミノ酸は主に20種類です。この20種類のアミノ酸は、からだの中で合成されない必須アミノ酸と、合成される非必須アミノ酸とに大きく分けることができます。必須アミノ酸は、毎日の食事から必ず摂ることが必要とされるアミノ酸です。

必須アミノ酸

体内では合成されず、必ず食物から補給しなければならない

  • バリン
  • イソロイシン
  • ロイシン
  • メチオニン
  • リジン(リシン)
  • フェニルアラニン
  • トリプトファン
  • スレオニン(トレオニン)
  • ヒスチジン

非必須アミノ酸

体内で合成できるが、様々な働きがあるため、摂取したいアミノ酸

  • アルギニン
  • グリシン
  • アラニン
  • セリン
  • チロシン
  • システイン
  • アスパラギン
  • グルタミン
  • プロリン
  • アスパラギン酸
  • グルタミン酸

※アルギニンは小児では必須アミノ酸に含まれる

タンパク質の「質」を決定するアミノ酸スコア

9種類の必須アミノ酸のバランスのことをアミノ酸スコアといいます。それぞれのアミノ酸が全て必要量を満たしていれば、アミノ酸スコア100となります。
しかし、一つでも必要量を満たしていなければアミノ酸スコアも減少します。

例)必須アミノ酸の1種類だけが必要量の60%しか満たしていない場合、アミノ酸スコアは60となります。

アミノ酸スコアとプロテインスコア 〜タンパク質の評価方法〜

食品 アミノ酸
スコア
プロテイン
スコア
鶏卵 100 100
牛肉 100 80
大豆 100 56
牛乳 100 74
アジ 100 89

アミノ酸スコアの方が新しい指標ですが、それよりも前に出たプロテインスコアの方が評価が厳しく実用的という意見もあります。数字が高いほうがタンパク質として質がいい印です。

タンパク質の評価方法 ~PDCAAS~

PDCAAS(Protein Digestibility Corrected Amino Acid Score =タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア)は、FAO/WHOが示した現在最新の国際基準です。

プロテインスコア、アミノ酸スコアに続いて出されたタンパク質の質を評価する方法で、タンパク質の消化されやすさを加えて改正されたものです。日本ではまだなじみのない評価方法となっています。

正しいダイエットとタンパク質

正しいダイエット。

私たちの肌、爪、髪はすべてタンパク質からできています。また、バストやヒップもタンパク質が支えています。そしてストレスに対抗するのも、心の健康もすべてタンパク質が源です。

外側だけではない、内側からの美しさのために、タンパク質をしっかり摂りましょう。タンパク質をしっかり摂ることが、本当の美しさへの第一歩となります。

ペプチド結合 ~赤ちゃんの肌がみずみずしい理由~

タンパク質はアミノ酸とアミノ酸がつながってできています(これをペプチド結合といいます)。ひとつのペプチド結合ができるとき、水分子が1つできます。

赤ちゃんは日々大きくなっています。大きくなるとき、からだは必要なタンパク質をどんどんつくり出していますので、ペプチド結合がたくさんできている状態です。すると、水分子もたくさんできることになります。ゆえに赤ちゃんはあんなにみずみずしい肌をしているのです。

タンパク質の同化が優位な時には、十分な水ができますので、血管内ボリュームが保たれます。しかしタンパク質の異化が優位な時には、血管内脱水、つまり血液がどろどろになるおそれがでます。

心をつくるタンパク質 ~神経伝達物質~

私たちはみな心を持っています。

私たちが嬉しい、悲しい、と感じられるのも、タンパク質のおかげです。タンパク質が材料となって心の素(神経伝達物質)がつくられていきます。

私たちの心はセロトニンやGABAといった神経伝達物質のやりとりが頭の中でバランスよく行われることで、毎日さわやかに過ごせています。

この神経伝達物質をつくるタンパク質を十分に摂ってこそ、私たちの心は穏やかでいられるのです。

タンパク質が神経伝達物質となる過程

薬を運ぶタンパク質 ~アルブミン~

私たちが病気のときに飲む薬。アルブミンというタンパク質にくっついて移動します。

このとき十分なアルブミンのトラックがないと、血中でフラフラする薬の割合が増えてしまいます。その結果、薬の作用が期待していたものと変わってしまったり、副作用が出るおそれが出てしまうのです。

薬を有効に利用するためにも、タンパク質をしっかり摂っておくことが重要となります。

ヒトの血清アルブミン分子の一次構造と代表的な物質が結合する部位

免疫力を高めよう! 〜タンパク質で免疫力アップ〜

タンパク質は免疫力を高めます。

例えば免疫対策として風疹などの予防接種をすると、からだの中に「抗体」とよばれるタンパク質ができます。この抗体が、これから侵入してくるウイルスと闘ってくれるのです。

しかし、このとき材料となる十分なタンパク質がからだの中にないと抗体が作れず、せっかく痛い思いをして打った注射が無駄になってしまうおそれが出てしまいます。

免疫で活躍するタンパク質では、ほかにも補体というタンパク質が私たちを守ってくれています。

タンパク質はビタミン・ミネラルの強い味方

タンパク質はビタミン・ミネラルの強い味方です。

タンパク質は、ビタミンAや鉄を運んだり、鉄や銅を貯めたりしてくれます。つまり、タンパク質がないとせっかく摂ったビタミンやミネラルを運んだり貯めたりしてもらえず、無駄になってしまうおそれが出ます。

ビタミンやミネラルにしっかり働いてもらうためにも、タンパク質を毎日しっかり摂りましょう。

がんとタンパク質

オーソモレキュラーでは、がんはからだのタンパク質が切り崩されていく状態が極端に進んでしまう全身の代謝異常としてとらえます。

そこで、オーソモレキュラーのがん治療では、血液検査をしながら良質なタンパク質などの栄養素を充分量投与し、適切な栄養評価とIVC(ビタミンCの点滴)を併せて行います。総合的な栄養アプローチは、がん治療の新しい可能性を提供します。

タンパク質を多く含む食品(1食当たり使用量と含有量)

タンパク質を多く含む食品は以下の通りです。

生命の基本 タンパク質。人生をより豊かに過ごすために、適切な量のタンパク質を摂りましょう。

食品 肉類 豆・豆製品 乳製品
クロマグロ
(赤身、生)
豚ひれ肉
(生)
全卵
(生)
納豆 豆腐 パルメザン
チーズ
1食
当たり
使用量
6切
[少し厚め]
(100g)
100g 全卵2個
(100g)
1パック
(40g)
1/2丁
[木綿]
(150g)
大さじ1.5
(14g)
含有量 26.4g 22.7g 12.3g 6.6g 9.9g 6.1g

1食当たりの目安量で含有量を計算。
加熱調理した場合、それに伴う損失が考えられます。

タンパク質の摂りすぎについて

「タンパク質をたくさん食べると腎臓に負担がかかる。」こんなことを心配される方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、現時点では健康な成人がタンパク質を摂りすぎることによる健康障害を示す十分な報告は見当たっていません。ただし、さまざまな報告から、成人は年齢にかかわらず、1日体重1kg当たり2.0gにとどめるのが適当である、ということがいわれています(日本人の食事摂取基準2010年版)。

※すでに腎臓の病気などをお持ちの方は、医師のもとで管理を行うことをおすすめいたします。

もしかしてタンパク質不足?

以下の項目の中で、該当するものをチェックしてみましょう。10項目のうち3項目以上が該当したら、もしかするとタンパク質不足かもしれません。

肉や卵などはあまり食べない
  野菜中心、あるいは和食中心である
  豆腐や納豆などの大豆食品(植物性タンパク質)ばかり摂っている
  ご飯やパン、麺などで食事をすませてしまうことがある
  成長期である
  妊娠、授乳中である
  ステロイド剤を使用している
  スポーツをする。あるいは肉体労働である
  胃薬をよく使う
  腕や太ももが細くなった

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