多価不飽和脂肪酸の、ω-6系とω-3系のバランスが乱れることが、アレルギーなどの炎症性疾患を促進していると考えられています。ω-3系の不飽和脂肪酸が、炎症を直接抑制することもわかってきました。

アブラ(脂肪酸)のうち、多価不飽和脂肪酸はヒトの身体の細胞膜の構成成分です。状況によって細胞膜から切り離され、炎症を起こしたり静めたりする生理活性物質(エイコサノイド)になります。

脂肪酸の分類

炎症は、皮膚で起きれば皮膚炎に、血管で起きれば動脈硬化等の原因になります。

現代の日本人は、ω-6系のリノール酸を非常に多く摂取していると言われています。ω-3系の脂肪酸を積極的に摂取してバランスを良くし、炎症を抑制しましょう。また、EPAには中性脂肪などの脂質代謝を改善する働きが、DHAには脳機能を改善する働きがあります。EPAとDHAは協力して働くので、一緒に摂ることが望ましいと言えます。

摂りたい油脂、そうでない油脂

◎ω-3系油脂

亜麻仁油 エゴマ油 魚油
亜麻仁油 エゴマ油 魚油

◎γ-リノレン酸

ボラージ草 月見草
ボラージ草油 (月見草油)

γ-リノレン酸を多く含むボラージ草油は、ヨーロッパでは女性の不定愁訴の改善によく使われています。ビタミンB群、マグネシウムと一緒に摂るとより効果的です。

○オレイン酸、バター、ラード

オリーブ油 バター、ラード マヨネーズ
オレイン酸
(オリーブ油など)
バター、ラード マヨネーズ
(オレイン酸のもの)

マヨネーズには糖質が添加されていないものを選びましょう

△リノール酸が豊富な植物油

ごま油
菜種油
ごま油、菜種油など

×トランス脂肪酸

マーガリン揚げ物
トランス脂肪酸
(マーガリン、
ショートニング、
市販の揚げ物・
フライドポテトなど)

トランス脂肪酸のとりすぎによる健康への影響

トランス脂肪酸を多くとると、血液中のLDLコレステロール濃度が増加し、さらに、HDLコレステロール濃度が減少することが示されています。トランス脂肪酸を多くとりつづけると冠動脈性心疾患のリスクを高めることも示されています。
(農林水産省:トランス脂肪酸に関する情報 作成日:2007年3月23日)

リノレン酸とは

不飽和脂肪酸のひとつです。リノレン酸、リノール酸、EPAなどの不飽和脂肪酸は、摂取すると酵素によって代謝され、細胞膜に含まれるリン脂質の構成成分になります。そして、体内で炎症が発生した時などに生成されるエイコサノイド※(生理活性物質)の材料になり、炎症を抑えたり惹起したりする働きを始め、様々な働きをします。脂質の種類によって、生成されるエイコサノイドが決まっています。

※エイコサノイド:
プロスタグランディン(PG)やロイコトリエン(LT)、トロンボキサン(TX)等といった、生体機能の調整に働く不飽和脂肪酸の代謝産物。必要に応じて体内でごく微量が生成され、生成された局所で作用し、速やかに消失する。非常に多彩な働きをする。1系と3系は炎症を抑える作用、2系と4系は炎症を惹起する作用がよく知られている。

脂肪酸の代謝とエイコサノイドの生合成

ɤ-リノレン酸は体内で作れる?

1系のエイコサノイドの元になるɤ-リノレン酸は、上の図のようにリノール酸から体内で作ることができます。ところが、リノール酸からɤ-リノレン酸に変換させる酵素(Δ6デサチュラーゼ)の活性はヒトでは高くなく、しかも下記のようないろいろな因子によって阻害されます。

  • 不飽和脂肪酸のバランスが崩れた食事
  • 飽和脂肪酸の多い食事
  • マーガリンやショートニングなどのトランス型脂肪酸を多量に含む食品
  • アルコールの過剰摂取
  • 加齢、糖尿病、感染など
  • 補因子としての、亜鉛、ビタミンB6、マグネシウム、ビオチンの欠乏
  • ビタミンC、ナイアシンの不足

リノール酸は身体に良い?

リノール酸は、身体に良い油脂と言われていました。しかし、摂りすぎると血液凝集作用や炎症を惹起する作用を持ったアラキドン酸の生成を促進させてしまうことがわかっています。現代人の食生活では多くのリノール酸を摂取しているため、アラキドン酸の生成が過剰になりがちです。リノレン酸やEPA・DHAを積極的に摂取して、不飽和脂肪酸のバランスを良くすることが大切です。

リノレン酸を含む食品

α-リノレン酸
しそ油 エゴマ油 亜麻仁油
しそ エゴマ 亜麻仁
ɤ-リノレン酸
月見草(ボラージ草)油
月見草

レシチンとは

レシチンは、動植物、微生物界に広く分布している、リン脂質の一種です。

レシチンは一般名で、日本ではフォスファチジルコリンだけでなく、他のリン脂質やスフィンゴミエリンとフォスファチジルコリンの混合物を指しています。(広義のレシチン)

アメリカの栄養指導では、レシチンとはフォスファチジルコリンそのものを指しています。(狭義のレシチン)

ここでは、レシチンはフォスファチジルコリンのこととしてお話しいたします。

レシチンは細胞膜の主成分

60%が水でできているヒトのからだを、きちんと区切ってくれているのが細胞膜です。細胞膜はタンパク質と脂質でできています。

細胞膜は、「区切る」だけでなく、からだの情報を伝えたり、必要な物質を通して要らない物質を通さないようにするなど、とても大きな役割をしているものです。私たちは、この細胞膜が健やかでいてくれるおかげで、毎日を無事送ることができています。

そして、レシチンはこの細胞膜の主役になっている成分です。

レシチンを守るビタミンE

レシチンは真ん中にサビやすい(酸化されやすい)不飽和脂肪酸がくっついています。そのため、それをサビ(酸化)から守ってくれるビタミンEと一緒に摂ると効果的です。

レシチンの働き

  • 脂質二重層を形成→生体膜の主要構成成分
  • 脂質の吸収を助ける
  • 情報伝達物質の材料(アセチルコリン)
  • 脂肪肝の改善
  • 神経細胞のミエリン鞘(髄鞘)の主成分 など

レシチンは脂質の吸収を助けます

レシチンは水とあぶらの両方に親しみやすい性質を持っています。

そこでレシチンは、からだの中で脂質、脂肪酸、コレステロールや脂溶性ビタミン(ビタミンA、E、D、K)など水に溶けにくいものを包み込み、ミセルをつくり、水に溶けるようにします。そうすることで、これらの栄養素が腸で吸収されるのを助けてくれているのです。

脂肪肝とレシチン

レシチンは、肝臓から中性脂肪を運び出す手助けをしてくれます。 脂肪肝や隠れ肥満の方は、肝臓から脂肪を出す働きをしてくれるタンパク質とレシチンをしっかり摂るといいかもしれません。

レシチンは神経伝達物質アセチルコリンの材料

レシチンは、神経伝達物質アセチルコリンの材料です。

アセチルコリンはコリンとアセチルCoAからできています。このとき使われるコリンが、レシチン(フォスファチジルコリン)からできています。

アセチルコリンとは

アセチルコリンは、副交感神経や運動神経の末端から出る神経伝達物質のことです。アセチルコリンは、 神経細胞と神経細胞のつなぎ目(シナプス間)で興奮を伝えたり、副交感神経の興奮、骨格筋などの収縮を起こします。さらには血圧降下の作用も持っています。

アセチルコリンは、特に記憶に関係の深い物質でもあります。認知症の方は、脳内のアセチルコリンが著しく減少しているという報告があります。

健康な脳の強い味方、レシチン

レシチンは健康な脳の強い味方。物忘れが気になる方などは、ぜひレシチンを積極的に摂りましょう。

こんな方はぜひレシチンを!

  • 最近物忘れが多い
  • 認知症が気になる
  • アルツハイマー病が気になる
  • お酒を飲む機会が増え、肝臓が心配
  • 高血圧や動脈硬化が気になる
  • タバコを毎日吸う

レシチンを多く含む食品

レシチンを多く含む食品は卵黄です。卵の栄養価はアミノ酸バランスが優れているだけではなく、神経伝達物質の原料となるフォスファチジルコリンの含有量がとても多い食品です。

レシチンを多く含む食品としては他に大豆がありますが、フォスファチジルコリンの量は卵の方が多くなっています。

「マヨネーズ」とレシチン

マヨネーズは糖質制限食の味方です。マヨネーズの主な材料は、酢と油と卵黄ですね。

この酢と油という混ざりにくいものをうまく調和させてくれているのが、卵黄です。卵黄の中に含まれるフォスファチジルコリンは、水にも油にもなじみやすい性質を持っていて、これが「水と油」というなじまない2つの性質のものを1つにまとめてくれているのです。

卵黄が入っていないドレッシングはしばらくすると油分と水分が分離してしまいます。

早期発見よりも予防が大切。近年、高齢化がますます進む日本において、EPA・DHAは予防医学上必須の栄養素といえます。1970年代のイヌイットの調査などから始まり、認知症予防、がん発症予防など、さまざまなEPA・DHAの生理機能の科学的実証がなされてきています。

EPA、DHAができるまで

α-リノレン酸
(C18:3)
→
エイコサペンタエン酸
(EPA;C20:5)
→
ドコサヘキサエン酸
(DHA;C22:6)
EPA、DHAは人の体内で魚介類、亜麻仁油、シソ油、海草などに多いα-リノレン酸からできていきます。しかしこの反応を促す酵素が弱く、なかなか十分なEPAやDHAはできません。

よって、EPAとDHAは、人が食べて摂るべき必須脂肪酸になっています。

中性脂肪とEPA、DHAの働き

EPAやDHAには、特に抗血液凝固や中性脂肪低下作用が報告されています。
そこで、EPAやDHAは「食後の血中中性脂肪が上昇しにくい食品」として特定保健用食品にもなっています。

EPA(エイコサペンタエン酸)

エイコサペンタエン酸(EPA)は、体内で合成されない必須脂肪酸の一つです。
DHAと同じく、中性脂肪の低下や、血小板凝集の抑制に効果があるとして注目されています。
EPAはIPAとも呼ばれます。

必須脂肪酸

必須脂肪酸は5つあります。
リノール酸α-リノレン酸アラキドン酸、そしてDHAEPAです。

その昔、ラットに脂肪欠乏食をあげると、成長が止まり、皮膚症状が現れてしまいました。そのとき、バー夫妻が食事に含まれるリノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸がこれらの症状を改善するのに有効であることを突き止めました。これにより、必須脂肪酸の概念が提唱されるようになっていきました。

EPAと細胞膜

EPAはとても柔らかい脂肪酸です。EPAを毎日たくさん摂っている人の細胞膜はEPAが多くなり、とても柔軟な細胞膜ができることになります。

また、この細胞膜に含まれたEPAがいろんな炎症を抑えてくれる物質に変わって、私たちを炎症から守ってくれる働きもしてくれています。

EPAとビタミンE

EPAはとても柔らかい脂肪酸で、細胞膜をしなやかにしてくれますが、欠点はすぐに酸化されてしまうことです。せっかく摂ったEPA。これは大切に守りたいですね。

EPAを守るのに、ビタミンEが大活躍してくれます。ビタミンEは、細胞膜に入り込んで、柔らかいEPAを酸化から守ってくれるのです。

EPAとがん

生体膜リン脂質に取り込まれたEPAは、ガン患者さんの味方です。

EPAは、がん患者さんの食欲を減らしたり、炎症反応を起こしたり、体重を減らしてしまう物質に対抗してくれる物質をつくり出します。

月経困難とEPA

下腹部痛や激しい腰痛、頭痛、嘔吐、不眠を伴う月経困難。辛いですね。

この辛い「月経困難」の反応には、プロスタグランディンという物質が関与しています。そしてEPAはこの痛みを抑えてくれる方の物質(プロスタグランディンE3)に変わってくれます。

EPAを多く含む食品(1食当たり使用量と含有量)

EPAを多く含む食品としては、さば、いわし、まぐろなどがあります。
EPAは青背魚に多く含まれています。珍しいものでは、EPAは鮎の内臓に多く含まれています。
EPAを多く含む代表的な食品とその含有量は以下の通りです。

食品 大西洋サバ
(ノルウェーさば)
いわし缶詰 まいわし サバ缶詰
1食当たり
使用量
100g
(水煮)
100g
(トマト漬)
2尾分、可食部
(塩焼き)
100g
(味噌味)
含有量 1.7g 1.3g 1.2g 1.1g

DHA(ドコサヘキサエン酸)

ドコサヘキサエン酸(DHA)は、必須脂肪酸の一つで、ヒトはDHAを食べ物から摂る必要があります。DHAは、母乳に多く含まれる成分であることから、ヒトに必要な成分であることがわかります。
体内でEPAからDHAに変換されますが、その変換率は低く、DHAそのものを摂取することが大切であることがわかってきました。

DHAには、下記のような作用があることが知られています。

  • 脳、神経系の機能を保つ
  • 加齢と共に減少し、生理機能の低下につながる
  • 子供の発育に必要
  • 網膜の機能を保つ
  • 炎症を抑える
  • 血液を流れやすくする
  • 体を酸化から守り、様々な疾患を予防する(抗酸化力)

DHAの分布

DHAは脳を中心とした神経組織にとても多く含まれています。
脳に必須の栄養素。それがDHAです。

アルツハイマーとDHA

DHAはn-3系脂肪酸の中で血液脳関門を通過できる唯一の脂肪酸です。

アルツハイマー型痴呆症で死亡した人と他の病気で死亡した人の脳を調べたところ、アルツハイマー型痴呆症で死亡した人の海馬のDHAが半分以下に減っていたことが知られています。

母乳とDHA

母乳にはたくさんのDHAが入っています。赤ちゃんの脳が健やかに育つのにDHAは必要なのですね。

日本人の母乳には欧米人と比べてDHAが多いといわれています。そしてこれは日本人が魚をたくさん食べるからではないかと考えられています。

お母さんはがんばってお魚をたくさん食べるといいことがあるかもしれません。

DHAを多く含む食品(1食当たり使用量と含有量)

DHAを多く含む食品には、珍しいものでは鮎の内臓があります。一般にDHAはマグロの脂身、サバ、ぶり、はまち、サンマなどに多く含まれます。

食品 大西洋サバ
(ノルウェーさば)
ブリ刺身 まいわし イクラ
(サケ)
1食当たり
使用量
100g
(塩焼き)
100g
(厚め7切れ)
2尾分、可食部
(塩焼き)
20g
(寿司2個分)
含有量 2.7g 1.7g 1.5g 0.4g

脂質は、炭水化物・タンパク質と並び、体内でエネルギー源となる大切な栄養素です。

脂質には、常温で固まるもの固まらないものがあり、固まるものは肉に、固まらないものは魚や植物に多く含まれます。どちらも体には必要であり、一方に偏らないようバランスを摂って食べる事が大切です。

常温で固まるもの
(飽和脂肪酸)

バター、ヘット(牛脂)、
ラード(豚脂)など
動物性油脂

常温で固まらないもの
(不飽和脂肪酸)

オリーブ油、シソ油、
魚油など
 

不飽和脂肪酸の中の、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸などは体内でつくることができず、食品から摂取することが必須となります。

DHA、EPAも
食品から摂取すべき
必須脂肪酸

脂質の主な働き

  • 身体に蓄えられ、必要に応じて分解されエネルギーになる
    エネルギー源として体温の調節や、働く力となります。少量の脂質で多くのエネルギーを得ることができます。
  • 細胞膜や脳神経組織をつくる材料となる
  • ホルモンの材料になる
  • 炎症に関係する物質のもとになる

不足すると・・・

発育の妨げとなり、体温を保つ熱や、活動する力も弱まり、身体の消耗が激しくなります。また、脳も脂質(コレステロール)でできているため、コレステロールが低い方にうつ病が多いなどの報告もされています。

脂質を多く含む食品

青魚、ナッツ、脂つきの肉、バター、オリーブ油など

食品 和牛バラ肉
(脂身つき、生)
サンマ
(可食部、焼き)
生クリーム
(純脂肪)
くるみ
1食当たり
使用量
100g 中1尾
(80g)
1/4パック
(50g)
5粒
(5g)
含有量 50.0g 19.9g 18.0g 3.4g

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